残業が多すぎるため、自身の健康を害してしまう医師も多くいるといいます。緊張感のある医療現場での多忙な勤務をこなす医師は、さらに時間外の過重労働をも強いられているという過酷な状況なのです。
そもそも、医師の残業時間は法律で定められていないのでしょうか。また、医師の残業時間を減らすことはできるのでしょうか。医師の残業の現状と、残業制度などについて考えてみましょう。
医師の残業(時間外労働)の現状
過重労働は医療事故の危険性がある
勤務医にとって、当直に引き続いての通常診療や、休日の緊急呼び出し、残業、こういったことは日常的に起こっているそうです。現役の病院に勤務している医師の中には、「タイムカードが事実上ない」「残業は超過分を自分で調整して申告する」といった声も聞かれます。
では、医師の残業が増えると、どんな弊害が考えられるのでしょうか。
まずは、医師の過労が溜まり、日常生活に支障が出てしまう恐れがあります。そもそも、労働者の労働時間は、労働基準法により1週間あたり40時間を超えないよう定められています。
次に、医療の安全が守られなくなる危険性もあります。過酷な勤務環境にいる医師は、常にストレスフルな状態ともいえます。
医療事故や医療事故未遂(ヒヤリ・ハット)を経験する割合は、勤務時間が長くなるほど上昇するとされています。過重労働による睡眠不足は、作業能力を低下させたり、反応の誤りを増加させるのです*。
月80時間を超える時間外労働を行う医師が8.1%
厚生労働省の調査によると、医師の1か月あたりの時間外労働時間数は平均34.1 時間。
一見するとルールを守られているようですが、残業0時間が1割程度見られる一方で、80時間を超える医師が8.1%も見られました。許可病床数別でみると、規模が大きいほど残業50時間超えの比率が高まるようです。
時間外労働をする主な理由として、緊急対応や手術や外来対応等の延長、記録・報告書作成や書類の整理、会議・勉強会・研修会等への参加が挙げられています。病院規模が大きいほど、また医師の年代が低いほど、緊急対応を理由に挙げる比率が高くなります**。
*出典:厚生労働省医政局『医師の働き方改革について』
**平成27年度厚生労働省委託事業『医療分野の勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組に対する支援の充実を図るための調査・研究』
医師の残業制度とは
医師の責任感が残業につながっているケースもある
医師の過重労働に関する、定められた残業制度はないのでしょうか。
そもそも、医師の時間外労働に関しては、「残業」という概念が曖昧にされる傾向にもあるようです。
厚生労働省の委託事業による調査では、時間外労働時間通りに申告しているのは、医師のうち約半数の人しかいないことがわかっています。
時間外労働を申告していない医師の理由としては、「自分の都合や自分のこだわりのために残業したから」と答える比率が高く**、自分の仕事に対してプライドを持っていることが伺えます。
**平成27年度厚生労働省委託事業『医療分野の勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組に対する支援の充実を図るための調査・研究』
病院に勤務する医師は「雇用される立場」なので、労働基準法が適用されるのではないでしょうか。労働基準法の中には、「専門業種の裁量労働制***」という項目があります。特定の専門的な業務を行う職種では、実際の労働時間とは関わりなく、労使協定で定めた労働時間を稼働時間とみなすことができるというもの。
***厚生労働省労働基準局監督課『専門業務型裁量労働制』
しかし、医師の業務は専門的な職業にも関わらず、この中で決められた業種には含まれていません。そのため、医師の残業は、条件を満たしていれば時間外労働として認められるのです。