医師の転職を考えているものの、「何から始めればいいかわからない」と感じている先生も多いのではないでしょうか。転職は準備から入職までいくつもの段階を踏む必要があるため、全体像を把握しないまま動き始めると、退職交渉が間に合わなかったり、入職後にギャップを感じたりするケースも少なくありません。
この記事では、転職を検討し始めた段階から入職までの流れを、順を追って解説します。
目次
医師転職の基本的な流れ
医師の転職は多くの場合、以下の手順で進みます。
- 転職の検討・情報収集
- キャリアの棚卸し・希望条件の整理
- 求人探し・応募
- 病院見学・面接
- 内定・条件確認
- 退職交渉・引き継ぎ
- 入職準備
入職準備を終えると、晴れて入職となります。転職活動は求人探しから始まるイメージもありますが、実際は希望する条件や今後目指したいキャリアを改めて整理してから行うとスムーズに進みやすいです。
定期非常勤やスポットは希望する勤務開始日の「1〜2カ月前」に始めるのがおすすめ
エムステージが実施した「転職活動に関するアンケート」では、転職先決定までにかかった期間は「3カ月以内」が41.9%と最も多く、「3〜6カ月以内」が28.1%でした。すなわち、約7割の医師が半年以内に活動を終えていることがわかります。しかし、これは常勤の求人も含まれている調査です。
選考プロセスがシンプルな非常勤やスポット求人の場合は、これよりもずっとスピーディに、1〜2カ月前からのスタートでも十分に間に合います。
例えば、新しい定期非常勤を始めたい場合、1〜2カ月前であれば医療機関側の受け入れ体制も固まりつつあり、具体的な募集が出揃うタイミングにあたります。また、勤務する曜日や時間、給与条件などの細かな条件交渉や、現職への兼業申請(必要な場合)を行うのにも、ちょうど良い時間的猶予を確保できます。
なお、夏期休暇や年末年始といった「特定の繁忙期」に絞って好待遇のスポット求人を狙いたい場合は、「働きたい時期の2〜3カ月前」と、少し早めに動くと良いでしょう。
転職活動を本格的に始める前に準備すること
転職活動を効率よく進めるために、求人探しを始める前に自分自身の情報と希望条件を整理しておきましょう。事前の準備が、求人選びや面接での自己アピールに役立ちます。
スキル・キャリアの棚卸しをする
これまでの経験診療科・対応可能な処置・資格・専門医の有無などをリスト化しておきましょう。自分の強みを言語化しておくことで、求人選びや面接での自己アピールがスムーズになります。
転職の軸を決める
棚卸しした内容をもとに、希望するエリア・勤務形態・収入・診療内容などの条件を整理します。条件に優先順位をつけておくと、複数の求人を比較するときに判断がしやすくなります。
現職の就業規則を確認する
新たな勤務を始めるにあたり、ご自身の現在の状況に合わせて就業規則を確認しておきましょう。
副業や掛け持ちとして始める場合は、現職の「副業・兼業規定」の確認が必須です。特に国公立病院などの勤務医は公務員(または準公務員)扱いとなるため、事前の兼業許可申請の手続きが必要なケースが多いです。
現職(常勤・非常勤)を辞めて移る場合は、退職の申し出期限を確認します。常勤先を退職する場合はもちろん、既存の非常勤先を辞めて新しい求人に入れ替える場合も、規定の予告期間(一般的には1〜3カ月前など)を事前に把握しておく必要があります。
履歴書・職務経歴書を作成する
経験診療科や対応可能な処置・手技を具体的に記載した職務経歴書を用意しておきましょう。応募先によってフォーマットが異なるため、ベースとなる文書を作っておくと効率的です。
在職中に進める転職活動のポイント
転職活動は、できるだけ在職中に進めるのが基本です。収入の空白期間を避けるためにも、現職を続けながら並行して動き始めましょう。
求人探しは複数の方法を併用する
求人の探し方には、医療機関への直接応募、知人からの紹介、そして医師専門の転職エージェントの利用など、複数のルートがあります。特に条件の良い非常勤やスポット求人をタイムリーに確保するためには、これらの手段を幅広く視野に入れて情報を集めるのが理想です。
情報収集の手間を省きながら効率よく希望の案件を網羅するための現実的な手段として、エージェントを活用する医師が増えています。エムステージの調査によると、約5割の医師が、求人探しにおいてエージェントの活用に大きなメリットを感じていると回答しています。
▼実際の声
「エージェントがまだホームページなどに掲示していない新規の求人や細かい情報を持っているから、自分の希望に合う求人先を提案してくれて、効率よく就職先が見つかった」(60代・健診・ドック)
病院見学・面接で現場を確認する
どうしても求人票だけではわからない情報は存在します。より詳しく知りたいことは見学や面接の場で確認しておきましょう。当直回数・症例数・スタッフ体制・電子カルテの種類・職場の雰囲気など、入職後のギャップを防ぐためにも事前の実態把握は欠かせません。
内定後の退職交渉のタイミングを逃さない
副業として新しく枠を増やす場合は不要なステップですが、新しい勤務先に移る場合は、内定が出たらできるだけ早く現職への退職申し出を行いましょう。退職交渉が長引くと採用側へ迷惑をかけるほか、相手側に悪い印象を与えてしまいます。
内定後・退職・入職までに確認すること
内定が決まった後も、入職までにやるべきことが複数あります。焦らず一つひとつ確認しながら進めましょう。
労働条件通知書で条件を確認する
内定承諾前に、労働条件通知書で給与・勤務時間・当直回数・有給休暇などを確認しましょう。口頭で聞いていた条件と相違がないかを必ずチェックします。
退職交渉・引き継ぎを進める
現在の常勤先を辞めて非常勤へ転向する場合などは、退職の承諾を得て引き継ぎを進める必要があります。
一方、既存の定期非常勤(アルバイト)を辞めて新しい職場に入れ替える場合は、常勤ほどの長期的な引き継ぎは必要ないケースが大半ですが、後任の医師やクリニックのスタッフが困らない最低限の申し送りは欠かせません。不十分な引き継ぎは他のスタッフや患者さんに迷惑をかけてしまいます。円満な退職を目指すためにも、時間的な余裕を持って丁寧に対応しましょう。
転職で失敗しないためのポイント
転職活動を進めるなかで、見落としがちなポイントがあります。入職後に後悔しないためにも、以下の点を意識しておきましょう。
転職理由を明確にしてから動く
「なんとなく転職したい」という状態で動き始めると、いざ求人を見つけたときも判断基準がブレやすいです。職を変えることが目的になった結果、入職後に同じ不満を繰り返してしまうこともあります。転職によって何を実現したいのかを明確にしてから始めるようにしましょう。
実際の仕事内容や職場の実情を把握する
転職で失敗しないためには、実際の職場環境や業務内容の事前確認が欠かせません。「『医師が転職で後悔したこと』についてのアンケート」でも、約7割の医師が入職前に確認しておくべきことに「実際の仕事内容」を挙げています。
見学や面接の場を活用して職場の雰囲気やスタッフとの相性を確認するほか、可能であれば非常勤でお試し勤務をしてから入職を決めるのも、ミスマッチを防ぐ有効な手段です。
▼実際の声
「看護師が2交代制で、24時頃に申し送りがあり、疑問点があるとちょうど当方の寝入り端に問い合わせの電話が入り、何回も入眠を妨げられた」(50代・一般病院)
「新規クリニックオープンだからと持ちかけられ、急に仕事内容を変えられた」(40代・一般病院)
雇用条件は口約束を避け、必ず書面で確認する
知人からの紹介などで詳しい条件確認を遠慮してしまい、口約束のまま契約を進めると、入職後にギャップを感じる原因になります。「『医師が転職で後悔したこと』についてのアンケート」でも、多くの医師が重要なことに「不明点がないように、しっかりと雇用条件を確認する」「雇用条件は明文化して、書類で残す」を挙げています。
「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、必ず詳細な条件を確認します。もし直接聞くのがはばかられるのなら、転職エージェントのコンサルタントを介して聞くのも良いでしょう。
医師転職の流れを把握してスムーズに進めよう
この記事では、医師転職の準備から入職までの流れについて解説しました。キャリアの棚卸しと転職の軸を整理したうえで求人探しを始め、内定後は速やかに退職交渉・入職準備を進めることが、スムーズな転職につながります。
転職活動を効率よく進めたい方は、医師専門の転職エージェントへの相談も選択肢の一つです。多忙な日々だからこそ効率的な方法を賢く取り入れ、納得のいく転職活動を進めましょう。