内定を獲得し、「あとは入職日を待つだけ」と安堵していませんか。
しかし実際には、内定承諾から始まり、退職交渉や業務の引き継ぎ、非常勤であれば事前のスケジュール調整など、入職までにやるべき準備は山積みです。段取りを誤るとスムーズな勤務開始に支障をきたすおそれがあるため、各ステップの正しい手順を把握しておくことが大切です。
この記事では、先生方が無理なく入職への準備を進められるよう、内定後から初日を迎えるまでの全体像を詳しく解説します。
医師の内定後から入職までの大まかな流れ
内定通知を受けた後は、内定の承諾、必要書類の用意、具体的な入職準備が始まります。常勤としての転職では、これらに加えて現職への退職申し出や引き継ぎも並行して進める必要があります。
常勤での転職か、非常勤(定期非常勤・スポット勤務)としての外勤かによって、手続きの負担や所要期間は大きく異なります。常勤の場合、退職交渉が難航するケースや、健康診断書を含め多種多様な書類提出を求められることが少なくありません。そのため、内定から入職まで1カ月〜3カ月程度を見込んでおくと安心です。
一方、副業や掛け持ちとして行う非常勤勤務であれば、基本的には面談や書類選考のみで進むため、入職までの期間が短く、手続きも比較的シンプルに完結する傾向があります。
内定承諾前に確認しておきたいこと
内定の連絡を受けてから実際に承諾するまでには、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
労働条件の書面確認
内定(採用)の連絡を受けた際、すぐに承諾を伝えるのではなく、まずは書面やメールで労働条件を確認することが大切です。
労働条件通知書や雇用契約書に記載された給与、勤務時間、当直の有無などが、面接時の提示条件と相違がないか入念にチェックしましょう。万が一不明な点があれば、エージェント等の第三者を介して事実確認を行い、双方が納得したうえで承諾するようにしましょう。
エムステージ社が実施した「『医師が転職で後悔したこと』についてのアンケート」を見ると、多くの医師が『事前に聞いていた給与や仕事内容と違った』と後悔しており、『雇用条件は明文化して書類で残す』『不明点がないようにしっかり確認する』ことの重要性を挙げています。
実際に、『年俸決定後に、当直代は年俸込みだと言い出された(50代・一般病院)』『口約束で細かく条件を決めなかったのが敗因だった(60代・クリニック)』といった声も寄せられています。
【参考】「医師が転職で後悔したこと」についてのアンケート.csv
回答期限と保留の相談
内定への回答期限は、原則として1週間〜10日以内が目安となります。スポット勤務などの急募案件では、より迅速な回答を求められることもあります。他施設での選考結果を待っている場合は、期限内に保留の相談を入れましょう。
回答の保留は決して珍しいことではありません。回答方法は電話・メールのどちらでも差し支えありませんが、誠実なコミュニケーションを心がけてください。
内定を辞退する場合のマナー
検討の結果として内定を辞退する場合は、決断した時点ですみやかに連絡を入れるのが最低限のマナーです。医療機関側はすでに入職に向けた受け入れ準備を進めているため、誠意をもって、なるべく早めに伝えるようにします。
退職交渉と引き継ぎで押さえておきたいこと
退職を伴う転職の場合、内定承諾後のステップとして現職への退職交渉と業務の引き継ぎに入ります。ここは転職活動において特に気を配りたい場面ですので、ポイントをきちんと押さえておきましょう。
現職への退職申し出
現場のシフトや体制へ配慮するためにも、現職への退職の意思表示は可能な限り早めに行います。エムステージが実施した「『医局』に関するアンケート」を見ると、退職や退局を伝える際に「引き留められた」と回答している医師は多いです。
医局人事での勤務であれば、まずは教授や医局長へ相談し、その後に勤務先へ正式に申し出るのが一般的なフローです。医局に所属していない場合は、直属の上司や院長、人事担当者へ直接伝えます。
ここで意識すべきは、「退職の許可を強硬に求める」のではなく「現場に迷惑をかけない退職時期を相談・調整する」というスタンスと、揺るがない意思表示です。強い引き止めに遭って退職時期がずるずると延びてしまうと、転職先にも迷惑がかかってしまいます。
引き止めを受けた際も毅然とした態度を保ち、退職の意思が固いことを丁寧に、かつ誠意をもって伝えましょう。
退職日と入職日の調整
現職の退職日と、新たな勤務先への入職日はセットでスケジュール調整を進めます。もし退職から入職までの間に「雇用の空白期間」が生じると、国民健康保険や国民年金への一時的な切り替え手続きが発生し、事務的な手間がかかります。
現職の退職日の翌日が次の勤務先の入職日(あるいは契約開始日)となるようスケジュールを組むと、社会保険の手続きが途切れずスムーズです。
入職前に準備しておくこと
新しい職場への入職、あるいは非常勤・スポットでの初回勤務の目処が立ったら、提出書類や当日に向けた準備に着手します。
提出書類
常勤・非常勤にかかわらず、入職にあたっては医師免許証、保険医登録票などのコピーの提出が必須となります。これらは採用側が施設基準を満たしているかや、各種申請手続きを行うための重要な書類となるため、ご自身の保有資格は正式名称で正確に準備・提示できるよう早めに手配を進めましょう。また、確定申告や年末調整の手続きのために、現在の勤務先から源泉徴収票を受け取ることも忘れないようにしてください。
そして、提出・受領する書類の中で最も入念に確認すべきなのが「雇用契約書」や「労働条件通知書」です。転職活動においては、事前に口頭で聞いていた給与(当直代の扱いや各種手当など)や勤務内容、有給休暇の規定などが、実際の書面では曖昧に記載されているケースがあります。入職後のトラブルを防ぐためにも、面接時の提示条件と相違がないか、規定が明文化されているかをしっかりとチェックしてください。
転居を伴う場合の手配
常勤転職などで転居を伴う場合は、住居の手配や引っ越し業者の選定を急ぐ必要があります。新しい業務に支障が出ないよう、遅くとも入職日の1週間前には新居へ移れるスケジュールを立てるのが理想です。住民票の異動やマイナンバーカード、運転免許証の住所変更といった公的手続きも入職前に済ませておくと、入職後の慌ただしさを抑えられます。
なお、非常勤・スポット勤務などで遠方の医療機関へ赴く場合は、前泊の必要性や交通手段・ルートの確保を早めに行っておきましょう。
入職後のギャップを防ぐ方法
勤務初日の戸惑いや「こんなはずではなかった」というミスマッチを軽減するため、事前の情報収集や準備が役立ちます。
業務環境やローカルルールを確認しておく
勤務先の業務環境について事前にできる限りの情報を集めておきます。導入されている電子カルテのメーカーや院内のローカルルールのほか、常勤であればオンコール待機の頻度や当直帯の救急対応数、非常勤・スポット勤務であれば当日の集合場所、受付窓口、白衣やスクラブ・聴診器などの持参物の有無などを事前に確認します。
事前見学やスポット勤務を活用する
常勤転職の場合、可能であれば正式な入職前にその医療機関で何度かスポット勤務に入らせてもらったり、改めて詳細な職場見学を申し出たりするのも有効な手段です。実際に一緒に働く医師やコメディカルの雰囲気、診療の動線を体感することで、入職後のギャップを未然に防げます。
医師の内定後から入職までの流れを把握して万全の準備をしよう
この記事では、医師の内定後から入職までに必要な準備や手続きの一連の流れについて解説しました。
内定から入職(あるいは初回勤務)までの期間は、常勤・非常勤問わず、スケジュール調整や必要書類の準備などが重なるため、想像以上に多忙になりがちです。常勤での大がかりな手続きと、定期非常勤・スポットでのピンポイントな準備では負担の性質は異なりますが、いずれの場合も「提出期限や約束を守ること」「関係各所への礼節と配慮を忘れないこと」が、スムーズに働き始めるための大切なポイントです。
各ステップの手順を正しく理解し、余裕を持ったスケジュールで万全の準備を進めていきましょう。