医師の退職の伝え方は?タイミング・切り出し方・引き継ぎまで解説

いざ退職を決意しても「どう伝えたら良いか」と悩む医師は多いものです。あるいは「誰に・いつまでに」伝えれば良いのかも迷うかもしれません。常勤や医局所属に限らず、非常勤(アルバイト)の場合も「契約期間の途中でも辞められるのか」という不安から退職を切り出しにくいケースがあります。

この記事では、事前の準備からタイミング、伝える順番、切り出し方、引き継ぎまで、円満退職のポイントを解説します。

退職の意向を伝える前に整理しておくこと 

スムーズに退職の意向を伝え、トラブルなく手続きを進めるには事前準備が不可欠です。まず以下の2点を整理しましょう。

退職の意思を固める 

退職の意思が固まらないまま上司に相談してしまうのは、自分の意思が揺らぐ要因になりやすいです。強い引き止めに遭ったときに断りきれず、交渉が長引く原因になります。

エムステージが医師を対象に実施したアンケート調査によると、実際に退局(退職)を経験した医師の50.0%(半数)が「退職時に引き留めに遭った」と回答しています。また、引き留めに関する実際の声としては、以下のようなエピソードが寄せられています。

▼実際の声

「教授室に呼ばれ、好条件の人事を提示されるなど2時間ほど慰留されたが、最終的には退局を認めていただいた。」(50代・呼吸器内科・勤務医)

「退局を決めても、他の先生に先を越されて、医局のことを考えるとなかなか続けて退局出来ず、3年かかりました。」(50代・皮膚科・勤務医)

このように、医局や病院側からの熱心な引き留め、あるいは周囲の状況による引き延ばしに直面した際、自身の意志が曖昧だと流されてしまうリスクがあります。

就業規則の退職規定を確認する 

退職に必要な期間は就業規則に定められています。手元の規則や労働条件通知書を確認しましょう。規定上は退職の1カ月〜3カ月前までの申し出と定めているケースが多いですが、あくまでこれは最低限のルールです。

後任確保や枠調整を考慮するなら、「退職希望日の3カ月〜6カ月前」の申し出が円満退職のマナーと言えます。

なお、非常勤などで「有期雇用契約」を結んでいる場合、やむを得ない事由がない限り期間中の解除は原則としてできません。契約時の退職条件をしっかり確認しましょう。

誰に・どの順番で伝える?

退職の意思を伝える相手と順番は、医局所属かどうかで異なります。医局所属の場合、直属の上司から医局長、教授へと順に伝えるのが一般的です。教授への報告前に周囲に広まるとトラブルのきっかけになり得るため、正式に決まるまではうっかり漏らさないよう注意しましょう。

医局に所属していない場合や、非常勤として勤務している場合は、直属の上司(院長や診療部長など)に報告し、その後人事担当者へ伝えるという流れが基本です。いずれの場合も、同僚には上司への報告が完了してから伝えましょう。

退職の伝え方・切り出し方

相手と順番が決まれば、いよいよ切り出しです。配慮に欠けるとスムーズに話が進まず、気まずい思いをしかねません。ここでは、上司に伝える際のポイントを3つ紹介します。

場と時間を選んで切り出す

退職の意思を切り出す際は、上司が忙しくない時間帯を選び、「少しお時間よろしいですか」と個別に声をかけましょう。

相手の状況や環境に配慮することが円滑に話を進めるポイントです。周囲に聞こえない会議室など静かな場所を選ぶようにしましょう。

退職交渉は「相談」ではなく「報告」として臨む 

退職の意思を伝える際に迷いを見せてしまうと、引き止めにあった際に断りにくくなります。これまでお世話になったことへの感謝を丁寧に伝えながらも、退職の意思は変わらないという毅然とした姿勢で臨みましょう。退職交渉は「認めてもらう相談」ではなく「退職日の報告の場」と捉えることが大切です。

エムステージが実施した「『医局』に関するアンケート」では、退職日が決まる以前に勤務先の誰かに「相談しなかった」と回答した医師が半数以上という調査結果になりました。人生の大きな選択を誰かに相談することは大切ですが、上司に伝える際はあくまで報告の形で話すようにしましょう。

▼実際の声

「すんなり辞めるには、退局後の就職をしっかり決めてから辞める事を話すと、引き留められず辞めれると学びました。(原文ママ)」(50代・皮膚科・勤務医)

退職理由はポジティブな表現にする 

職場への不満や人間関係など、ネガティブな本音をそのまま伝えてしまうと、職場側が「改善できる」と判断して引き止めの材料にされたり、退職までの期間に仕事がやりづらくなってしまったりする可能性があります。

そのため、もし退職を考えたきっかけにネガティブな本音が含まれていたとしても、伝える際には「ライフプランに合わせた働き方に移行したい」「家庭の事情(実家に戻る、介護など)」といった、勤務先の努力では対応が難しい事情や、今後のキャリアに向けた前向きな展望を主軸に説明するのが円満退職のポイントです。

本音をすべて明かさないことに対して、どこか後ろめたい気持ちを抱く先生もいるかもしれません。しかし、これは決して不誠実な嘘をつくということではなく、これまでお世話になった職場への敬意を示し、最後まで良好な関係を維持するための角を立てない配慮です。今後のご自身のキャリアや、ほかのスタッフとの人間関係を円滑に保つためにも、お互いにプラスになるコミュニケーションを心がけましょう。

退職時の引き継ぎで注意したいこと 

無事に承認を得られたら、次は後任への引き継ぎ業務です。最後まで責任を持って業務を引き継ぐことは、医師としての信頼を保つためにも大切です。

引き継ぎスケジュールを早めに組む

退職が決まったら、退職日から逆算して引き継ぎのスケジュールを立て、上司と合意しておきましょう。担当している外来や当直業務、対応中の患者様のリストを作成し、直近で行うことや検査結果待ちのものを分かりやすく整理しておくのがポイントです。

タスクを可視化しておくことで、後任医師は引き継ぎ後の業務を具体的にイメージしやすくなり、安心感を得られます。

カルテ・サマリーは誰が見ても分かるように記載する 

引き継ぎトラブルの多くは、カルテ記載の不備や情報共有不足が原因です。担当患者のサマリーは、経緯や方針が一目で把握できるよう、誰が見ても分かる客観的かつ正確な内容で記載しましょう。

また、懸念事項やこれまでの経緯など医学的な内容以外の注意点もカルテ外にまとめておくと喜ばれます。患者様への退職説明も後任任せにせず、可能な限り自ら直接伝えることが、患者様の安心と後任医師へのサポートにつながります。

医師の退職の伝え方に関するよくある質問 

医師が退職を伝える際、多くの方が疑問に感じるポイントをまとめました。

強い引き止めに遭って辞められない場合は? 

何度伝えても強い引き止めに遭い、交渉が平行線になってしまう場合は、就業規則に則って退職届を提出するなど、明確な意思表示を進めることが大切です。民法では、無期雇用契約であれば退職の申し出から2週間で退職できると定められています。

どうしてもご自身での対応が難しいと感じる場合は、医師専門の転職エージェントなどの第三者に相談し、アドバイスをもらいながら進めることでスムーズに解決できることもあります。

【参考】民法第627条

メールやLINEで退職を伝えてもよい? 

退職のような重要な報告は、口頭で直接伝えるのが社会人としての基本的なマナーです。文面だけで済ませてしまうと、誠意がないと受け取られ、心証を悪くするおそれがあります。

ただし、上司が極端に多忙で面談の時間が全く取れない場合には、まずはメールで「今後の働き方についてご相談したいことがあるため、お時間をいただけないでしょうか」とアポイントを取る分には問題ないです。

退職理由は正直にすべて伝えるべき? 

職場への不満や人間関係の悩みなど、ネガティブな退職理由を正直に伝えることはおすすめしません。「環境を改善するから」と引き止めの口実にされたり、関係が悪化して残りの勤務期間が気まずくなったりするリスクがあります。

円満に退職するためには、「家庭の事情」や「新しい分野でのスキルアップ」など、前向きで職場側が引き止めにくい理由(建前)を用意し、角を立てずに伝えるのが良いでしょう。

医師の退職の伝え方を押さえて、新しいキャリアへ進もう

この記事では、医師の退職の伝え方や切り出し方、円満退職に向けた引き継ぎのポイントなどについて解説しました。

医師の退職をスムーズに進めるには、意思を固めたうえで早めに動き出すことが何より重要です。退職理由はポジティブに言い換え、今後のキャリアのために本音と建前を使い分けるのが無難です。引き継ぎも早めに着手し、最後まで誠意を持って丁寧に進めることが円満な退職につながります。

退職後の働き方には、別の医療機関へ常勤として転職するだけでなく、定期非常勤やスポットアルバイトを組み合わせて柔軟に働くなど、さまざまな選択肢があります。ご自身のライフスタイルや理想のキャリアに合わせた求人探しや条件交渉は、医師専門の転職エージェントを活用するとスムーズです。新しい勤め先が決まった後の退職報告などについても気軽に相談できますので、ぜひ利用を検討してみてください。

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